| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-A-011 (Poster presentation)
ササゴイ(サギ科)は、待ち伏せや探索によって魚を捕食する。しかし、熊本市の東部に位置する水前寺成趣園など一部の地域では、それらに加えて餌釣りという捕食行動も行う。これは、釣り餌として生餌(昆虫など)や疑似餌(植物片など)を水面に浮かべ、それにおびき寄せられた魚を捕食する方法で、道具を使う知能的な行動と考えられている。この餌釣りでは、釣り餌の設置方法にいくつかの型が報告されている。それらは主に、釣り餌を水面まで嘴で運んで置く手法と放り投げる手法の2手法であるが、この違いに着目した定量的な研究はこれまで行われていなかった。そこで本研究では、これらのうち前者を「置き餌」、後者を「投げ餌」と定義し、2手法の違いを明らかにすることを目的に、餌釣りに使用した餌の種類、餌釣りのプロセスなどを手法間で比較した。その結果、置き餌では生餌、投げ餌では疑似餌が頻繁に使用され、手法と釣り餌種は密接に結びついていた。また、試行あたりの捕食成功率に手法による差は認められなかったが、設置した釣り餌に対する魚の出現率は投げ餌が、釣り餌に出現した魚に対する捕食成功率は置き餌の方が高いことが明らかになった。これらの結果から、それぞれの手法は、置く、または投げるという動作の見かけ上の違いだけでなく、プロセスにおいても、有利な段階が異なる2つの戦術であることがわかった。今回は定量的な調査ができなかったが、餌釣りを行った場所は、調査地の池の岸辺や複数の飛び石など様々で、時間帯も様々だった。このため、場所や時間によって、魚の釣り餌に対する反応や、使用可能な釣り餌種も違っていたと考えられる。ササゴイは、同じ餌釣りであってもプロセスや釣り餌種が異なる2手法を持つことで、場所や時間によって変化する魚の行動や釣り餌種の制限などに対応しやすくなり、捕食効率を上げているのかもしれない。