| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-A-015 (Poster presentation)
待伏型捕食者であるクモの体色は、背景への隠蔽や餌の誘因などにより捕食成功率に影響を与えている。また、造網性の種では網の形態(上下および左右の非対称性、飾り帯、ゴミグモ類におけるゴミリボンなど)も個体ごとに変異があり、体色と網形態がどのように餌昆虫やその他の飛来者の行動に影響を及ぼしているか知る必要がる。
ミナミノシマゴミグモは腹部の模様や色に連続的な変異が見られ、円網を張る。本研究では、野外で造網する57個体を用いて、体色および網形態と捕獲成功率を調査した。静止画を撮影して網の形態情報を記録するとともに、1時間のビデオ撮影を行い、そのデータより餌の衝突率、衝突位置、衝突後の帰結(捕食成功か、定位しても接近しないか、衝突しても気づかないか、逃げられるか、など)、衝突から定位までの時間、餌昆虫の二次元的な軌道を求めた。調査したクモは実験室内で腹部背面の撮影を行い、RGB値を抽出した。
画像解析の結果、餌の衝突は168回あった(2.9回/h)。衝突時以外のクモはほとんど動かないが、網上のゴミを触ったり、網を補修したり、大型のハチの接近や車の通行音に反応して網から落下したりすることがあった。画像からは衝突が確認できない時にも、衝突時と同じように定位し、網を引っ張って餌の存在を確認しているような行動も見られた。衝突に対しては、1秒以内に反応したクモのうち約半数は0.13秒以内に反応し定位を開始した。一方で、衝突に気づかない例も3割ほどあった。花粉や花びらの衝突に対して定位することは無かった。調査地は山の西斜面を南北に通る道路沿いであったため、道路に正面が向いた網を西側から撮影する場合が大半だったが、網の右方向90°の範囲に衝突した例が32%と多く、上と下がそれぞれ25%、左が18%であった。これら衝突時の特徴を個体間で比較し、体色や網形態の適応的意義を考察した。