| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-A-017  (Poster presentation)

ヤドカリのオスが配偶相手を取り替えるのはどんなときか

*和田哲(北海道大学大学院水産科学研究院), 守田安祐美(北海道大学大学院水産科学院), 小黒歩(北海道大学大学院水産科学院), 石原千晶(北海道大学大学院水産科学研究院)

配偶相手の変更は多くの分類群で知られている。「相対評価仮説」は、動物が現在の配偶相手よりも質の高い異性個体と出会ったときに配偶相手を変更すると予想している。オスがメスを交尾前ガードするヤドカリでも、オスが、現在ガード中のメスよりも上質(大型、産卵まで短時間)のメスに出会った際に、メスを取り替えることが予想される。ただ、上質のメスは、ほとんどの場合、他のオスにガードされている。この場合、オス間闘争で勝利しなければメスを取り替えることはできない。そのため、上質のメスが単独であるときにオスがメスを取り替える頻度よりも、上質のメスが他のオスにガードされているときにメスを取り替えようと試みる頻度のほうが低いかもしれない。一方、他のオスにガードされていることが、メスが上質であることを保証する社会情報になるのであれば、オスは他のガードペアと出会ったときに積極的にメスを奪って取り替えるかもしれない。
演者らは、ガード中のオスが、(1)野外で他のオスにガードされていたメス、あるいは (2)他のガードペアと出会ったときの行動を観察した。その結果、(1)で40例中3例でオスはメスを取り替えたのに対して、(2)では56例中15例で片方のオスが他方のオスからメスを引き離したものの、取り替えは3例でしか起こらなかった。(1)の結果は、新たなメスと出会っても、オスはガード中のメスを重視することを示唆する。(2)の結果は、オスが単独のメスよりも他のオスがガードしているメスの質を高く評価するが、他のオスからメスを奪ったあとは単独メスに対する評価と変わらなくなることを示唆する。発表では、引き離したメスや取り替えたメスがガード中のメスよりも上質かどうかを検討する。


日本生態学会