| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-A-018  (Poster presentation)

都市近郊におけるオオタカの繁殖生態について

*芳賀大, 夏原由博(名古屋大学大学院環境学)

 近年オオタカの生息域は拡大してきており、都市近郊の市街地に囲まれた孤立した緑地でも営巣が確認されてきたが都市近郊での食性に関する研究が少ない現状である。本研究ではオオタカが都市に進出し営巣できたのは、採食生態を都市環境に対応させたとの仮説を検証することを目的とし育雛期の食生態について調査を行った。
 調査地は愛知県のオオタカが繁殖した市街地に囲まれた緑地3地点であり2014~2016年までの3年間で計4巣分である。市街地に囲まれ営巣する緑地の規模が50ha以上のものを大規模緑地としそれより小さい場合は小規模緑地とした。2014年は小規模緑地aと大規模緑地B、2015年は前年度に調査した大規模緑地B、2016年はこれまでとは異なる別の大規模緑地Cで調査を行った。日の出から日没まで撮影を行ったビデオカメラの記録から可能なものは種同定を行い、できないものは小(スズメ大)・中(ムクドリ大)・大型サイズ(ハト類以上)を基準としたサイズごとに分類した。また営巣林内でのオスからメスへの餌の受け渡しの際に発生する鳴き交わしから雌雄どちらの狩り由来の餌なのか推定を行った。
 ビデオカメラ解析の結果、餌サイズ構成は各年各緑地において小・中型サイズの利用が多く、大型サイズはハト類ではなく主にカラス類を利用し似通った結果となった。カラス類以外で確認できたものは2014年度小規模緑地aでバン・人工食品のようなもの、2015年度大規模緑地Bでスズメ・シジュウカラ・キジバト、2016年大規模緑地Cでムクドリ・レースバト・ミゾゴイであった。
 雌雄別の餌推定ではオスが小型・中型サイズを主にメスへ受け渡し、メスは大型サイズの餌を単独で搬入していた可能性がある。各年各緑地において搬入回数ではオスのほうが多いが合計餌重量で見るとメスのほうが多く餌供給していた。オオタカは営巣環境に対して餌資源を変化させるだけでなく、雌雄での餌供給の役割分担も変化させていたことが明らかとなった。


日本生態学会