| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-A-025 (Poster presentation)
有毒の餌生物の人為移入は、在来捕食者相に対して負の影響を及ぼす。忌避学習は新奇な有毒餌生物を避ける有効な手段の1つであり、学習能力は捕食者の適応度に強く影響すると考えられる。シマミミズ(Eisenia fetida)はヨーロッパ原産の有毒のミミズで、世界中に人為移入・定着している。また、近年の分子系統学的研究によってこれまでシマミミズだと考えられてきた移入集団に、しばしばヨーロッパ原産の姉妹種であるE. andreiが混じることが明らかになりつつある。本研究では、中国中南部に分布するミミズ食ヘビであるRhabdophis pentasupralabialisのE. andreiに対する忌避学習能力を評価した。ヘビを二群に分け、一方に在来の無毒ミミズ、他方にE. andreiを3日に一度一定量ずつ11回にわたり与えた結果、在来ミミズを与えた群では終始ほぼ全てのミミズを食べた一方、E. andreiを与えた群では初回の給餌で7/11匹のヘビが少なくとも一部のミミズを摂食後に嘔吐し、続く数回の給餌で摂食量が急速に減った後、6回目以降の給餌で全てのヘビが全く食べなくなった。この給餌実験期間の前後に二群間で、在来ミミズ、E. andrei、および対照刺激の匂いに対する嗜好性反応を比較したところ、給餌実験前では匂いに対する反応に群間で差がなく、二群ともにヘビは両種のミミズの匂いに対して高い反応を示した。一方で、給餌実験後にはE. andreiの匂いに対する反応のみ群間で差が生じ、E. andrei給餌群のE. andreiの匂いに対する反応は対照刺激に対するものと同程度まで低下していた。以上の結果より、R. pentasupralabialisは外来の有毒餌生物であるE. andreiに対してすばやく忌避学習し、捕食前に匂いによって識別し回避するようになることが示された。