| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-030  (Poster presentation)

プレス型―パルス型撹乱の相互作用が植物群集の再集合に与える影響

*西澤啓太(横浜国立大学), 藤井佐織(アムステルダム自由大学), 北川涼(横浜国立大学), 辰巳晋一(横浜国立大学), 森章(横浜国立大学)

近年、世界中でシカなどの有蹄類が植生に過剰な植食圧を与えていることが報告されている。研究対象地である知床においても、エゾシカによる植食害に対する対策が講じられており、防鹿柵が設置されている。防鹿柵はエゾシカによる食圧という、恒常的な撹乱(プレス撹乱)を完全に排除する。一方で、森林ではネズミ大発生による食圧という稀に生じる撹乱(パルス撹乱)もある。防鹿柵ではネズミ侵入を防げない。ゆえにプレス撹乱がないところでもパルス撹乱は生じ得るという状況が生じた。
当研究では、これら異なる撹乱が食圧後の植物群集の再集合に与える影響を、分類群と機能的な多様性評価により定量的に評価した。解析の結果、プレス撹乱の有り無しに関わらず、パルス撹乱により多様性が一時的に低下することが分かった。また、パルス撹乱後の多様性回復過程においては、種の形質による順序があることが示された。とくにプレス撹乱の排除により一部の優占種の独占状態になっていた防鹿柵内では、多様性の回復は種子重量が多くストレージ効果のあるような優占種からとなっていた。プレスとパルスの撹乱はいずれもある程度は自然に生じるものである。プレスの完全排除のような植生保護は、逆にパルスがもたらす植物の時間的共存を抑制し、多様性回復のプロセスを改変し得ることが分かった。


日本生態学会