| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-034  (Poster presentation)

岩手県摂待川におけるサワグルミ林の森林構造とリターフォール量

*竹原明秀(岩手大学), 菅野裕貴(岩手大学), 大上幹彦(宮古市)

森林生産量は食物連鎖や林床・流域への物質供給に大きく関わる。特に葉や枝などの落下物(リターフォール)量は森林生産量の大部分を占める。ここでは,岩手県沿岸流域の生態系研究の一環として行っている森林調査の一部で,摂待川に発達するサワグルミ林の森林構造とリターフォール量を報告する。
摂待川は岩泉町上有芸から宮古市田老に流下する二級河川で,河口から約5km上流の河畔にあるサワグルミ優占林に方形区(50m×40m)を設置した。2012年と2015年に毎木調査(樹種,DBH,樹高など)を行い,18個の円形トラップ(直径80cm)の落下物をほぼ約1か月おき(冬季を除く2012年7月~2014年11月)に回収し,乾重を測定した。
調査林分では25種が出現し,高木層でサワグルミ,亜高木層でアサダ・オニイタヤ,低木層でコクサギ・ミツバウツギなどがそれぞれ優占し,胸高断面積合計(BA)の70%はサワグルミが占めた。2012年から2015年で,新規加入幹数は枯死幹数を上回り,生存幹の肥大量から,BAは増加した。
年間リターフォール量は3年間の平均6.0t/haで,冷温帯落葉広葉樹林で知られる平均値(3.9t/ha:森林立地学会2012)に比べ大きかった。年間落葉量(4.0~4.5t/ha)は年変動が小さかったが,年間落下繁殖器官量(0.2~0.9t/ha)と年間落枝量(0.6~1.5t/ha)は年変動が大きかった。年間落葉量はサワグルミ(83%),アサダ(5%),オニイタヤ(3%),ケヤキ(2%)が上位を占め,BAの上位種であった。落葉量の季節変化はサワグルミとアサダが8~10月へと段階的に増加し,オニイタヤとケヤキは10~11月の短期間に集中した。一方,落葉量には明確な季節変化は見られなかった。これらのことから落葉の季節変化は樹種で異なり,落枝は気象条件などの影響を受けている可能性が高い。


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