| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-040 (Poster presentation)
大規模攪乱後の森林の種組成は,攪乱前の種組成や,攪乱後に生残・加入した樹種,それらが生育する残存した森林パッチの分布とその立地の環境に影響される.本研究では,仙台平野沿岸部における津波浸水域を対象として,津波による大規模攪乱後に残存した森林パッチの空間分布と面積,それぞれの森林パッチを構成する樹種,大規模攪乱後に定着したと考えられる実生の有無,大規模攪乱前の土地被覆と標高を調べた.
残存した森林パッチの分布と面積を明らかにするために,津波後の空中写真(2011年,2013年撮影)を参照しながら仙台市の津波浸水域における森林を踏査し,森林パッチの空間分布図を作成した.全ての森林パッチにおいて林冠層および林床に出現した樹木の種名と,林床の植被率を記録した.大規模攪乱後に定着した樹種を明らかにするために,出現した実生の芽鱗痕を数え,種名とともに記録した.また,しおかぜ自然環境ログの震災前植生図と2006年に取得された5mメッシュDEMを,土地被覆と標高としてそれぞれ用いた.森林パッチの類似性を確認するために非計量多次元尺度法を用いて森林パッチを序列化した.
残存した森林パッチは海岸林に由来するものと屋敷林に由来するものとに大きく分かれた.前者は森林パッチのサイズによっても区分され,クロマツが単木的に残存する小規模パッチと,複数のクロマツからなる大規模パッチに分かれた.また,攪乱前の土地被覆にかかわらず,大規模パッチでは種数が多い傾向が認められた.海岸林由来の森林パッチや屋敷林由来の森林パッチに偏って出現する種が認められた一方,両者に出現する種も確認された.一部のパッチには,林冠層に同種が不在の,攪乱後に加入・定着した実生も確認された.残存した森林の種組成は攪乱前の土地被覆に依存するが,その後の変化には,パッチごとの種組成やパッチの面積・配置などの要因も影響すると考えられた.