| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-043 (Poster presentation)
京都府北東部に位置する八丁平湿原はミズナラとクリが優占する二次林で囲まれているが、クリ群落では近年その枯死が目立ち、衰退の傾向がみられる。当地のミズナラは2008年よりカシノナガキクイムシの穿孔被害を受けて多くの個体が枯死しているが、クリは穿孔被害は受けるもののその頻度も密度も低く、クリ衰退の原因は他にあると思われる。本研究では、30年前から継続している毎木調査のデータをもとに、クリ衰退のパターンを明らかにすることを目的とした。
湿原周辺二次林に設置した13個のプロット(計0.6ha)で胸高直径5cm以上の樹木を対象に、1980年より3年毎に継続している毎木調査のデータから、クリ・ミズナラ・ブナの胸高直径・3年間の成長量・生存枯死のデータを抽出した。成長量の変化と枯死の関係を個体毎にみると、ミズナラでは成長の旺盛な時期に枯死がみられるのに対し、クリでは成長が減衰した後に枯死がみられることが多かった。また、成長量を応答変数、胸高直径を説明変数として一般化加法モデルを構築したところ、ミズナラとブナではみられない成長量の減衰が、胸高直径40cm以上のクリで検出された。ただし、枯死はこの直径階級に集中はしていなかった。調査地のクリは、何らかの原因で成長量が減衰した個体が枯死する過程と、加齢に伴い成長量が減衰するという二つの過程で衰退していることが示唆された。