| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-044 (Poster presentation)
管理放棄年代が異なる半自然草原の種組成を調べることで、管理放棄に伴う草原性植物の消失のしやすさを比較することを試みた。栃木県日光市土呂部において、現在まで草刈りが継続されている調査区に加え、管理放棄年代が3段階に異なる調査区を設定した。これらの調査区は互いにごく近傍であり、放棄される前はいずれも毎年の草刈りで維持される半自然草原だった。管理放棄された調査区において10m×10mの枠に出現した樹木の胸高直径を測り、比較的大きな樹木を7-8本選んで伐採し、年輪の数を数えた。また、各調査区で1m×1mの調査枠を30個ずつ設置し、出現した植物の名前と被度を記録した。
管理放棄された調査区の樹木の平均年輪数はそれぞれ、6.5、9.8、12.9であった。放棄されてからの年数が大きくなるについて、樹木の胸高断面積合計が増加し、最初にシラカバが進入し、次にコナラが、その次にクリやミズナラが進入していた。各調査区における1m×1m枠の植物の出現頻度から、調査区ごとの植物の出現パターンを類型化したところ、5つのグループに分けられた。タイプAはどの調査区でも同じぐらいの出現頻度をもつグループで、アキカラマツやツリガネニンジンなどが含まれた。タイプBは管理放棄によってすぐに消失しないが、林冠が閉じると消失するグループで、アキノキリンソウ、ススキ、チダケサシなどが含まれた。タイプCは管理放棄後に出現頻度が増加するが林冠が閉じると消失するグループでオオアブラススキやカワラナデシコなどが含まれた。タイプDは管理放棄によってすぐに出現頻度が下がるグループで、ウツボグサやウメバチソウなどが含まれた。タイプEは樹林になると出現頻度が上がるグループだった。草原性植物の種類によって管理放棄に対する反応が異なることは、半自然草原の動態や保全を考える上で重要だと考えられる。