| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-045  (Poster presentation)

北日本(北海道・新潟周辺)のスキー場斜面植生

*露崎史朗(北大・院地球環境)

  スキー場は、日本でも世界的にも、経営数が減少している。加えて、地球温暖化に伴い、ヨーロッパアルプスの高標高スキー場では経営が困難になると予測されている。日本では、低標高においても多くのスキー場が開設され、スキー場斜面の生態系の保全や復元が必要になる可能性は高い。そこで、これまで調べたスキー場植生の記録を、今後のスキー場植生の保全・復元へのベンチマークとして報告する。調べられたスキー場は、北海道内スキー場、新潟および周辺のスキー場である。全てのスキー場において2 m × 2 mの方形区を用い、植生調査および高木種については幹数を記録した。あわせて、斜面方位・斜度を記録した。加えて、林縁からの距離、土壌硬度などをいくつかのスキー場では記録した。これらのデータを用いて、各スキー場における優占種・生活型・帰化率等の特徴を整理した。得えられた結果は以下の通り。
(1) 植生は、スキー場間で大きく異なり、在来種優占植生と非在来種優占植生に大きく分けることができた。それらの植生の発達には、スキー場の造成形態の影響が大きいと考えられた。
(2) 非在来種植生への木本植物の侵入は、在来種植生に比べると極端に少ない。在来植生にも複数の植生型が認められるが、その中でもススキ草地への木本植物の侵入が著しい。ただし、ススキが超優占した植生では、必ずしも木本植物の定着が認められるとは限らなかった。この傾向は、北海道・新潟の両地域において共通であった。北海道の高標高のスキー場ではススキの定着も木本植物の定着も低地スキー場に比して不良であった。
  以上のことから、木本植物の侵入可能な在来植生を発達させるには、開設以前あるいは開設時に適切な帰化種植生の発達を抑制する手段を講じることが必要であり、造成後に帰化種植生の発達が顕著である場合には速やかな(特にススキ)在来植生への誘導を行う方策の必要性が明らかとなった。


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