| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-048 (Poster presentation)
暖温帯から冷温帯への移行帯に位置する箱根・函南原生林において,標高別(600,700,800 m)に設置された長期継続調査区のデータをもとに,過去10年間の林分構造の変化について検討を行った。函南原生林では,過去40年間で林冠ギャップが縮小していることが報告されている。継続調査のデータでも調査地全体では過去10年間で,ギャップ形成等による大幅な個体数及び相対優占度の変動は認められなかった。種別では,常緑広葉樹のアカガシとイヌガシは,立木密度と相対優占度が上昇していた。一方で,ブナ,ヒメシャラ,イヌシデなどの落葉広葉樹は立木密度が低下していた。標高600 mの調査区では,尾根部においてアカガシとイヌガシによる集中的な立木密度の増加が認められた。標高700 mの調査区では,尾根と斜面の境界において,アカガシの集中的な立木密度の増加が認められた。同調査区では,イヌガシの立木密度も増加していたもの,空間的な集積性は認められなかった。同調査区では,斜面部でオオモミジの立木密度が増加していた。標高800 mの調査区では,尾根部においてアカガシとシキミの立木密度が増加していた。本研究の結果より,全ての調査区において過去10年間は種組成の変化はないものの,尾根部での常緑広葉樹の増加に伴い立木密度の空間的な不均一性が増大していることが明らかとなった。