| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-B-050 (Poster presentation)
近畿圏の中山間地の森林面積の6割以上を占める広葉樹二次林は、老齢、大径化しているものも多く、そのまま放置すると、生物害等の影響により森林劣化が進行する恐れがある。これらの森林資源の有効利用を進めるためには、利用可能な木質資源量の把握や多用途利用に向けた仕組みづくりが不可欠であり、現在滋賀県湖東地区の自治体や森林組合と連携しながら研究を進めている。
滋賀県東近江市では、標高200mから300mの山が平野部に点在しているが、現存の広葉樹二次林の種組成がどのような要因に影響を受けてきたかについては明らかにされていない。そこで、東近江市高木町、五個荘伊野部町、五個荘新堂町の合計26か所の広葉樹二次林において、DBH5cm以上の出現樹種の毎木調査をおこなった。調査は、林野庁森林生態系多様性基礎調査方法に準じて、半径11.28m(中円)の円形プロットでおこなった。データは、今回調査をおこなった26か所に加えて、滋賀県の多様性基礎調査データと東近江市による広葉樹毎木調査データを用い、プロット内の個体の胸高断面積をアバンダンスとしてNMDSによる種組成の解析をおこなった。3地域の中では、伊野部で出現種数が最も少なかったが立木密度は最も多く、上層木の枯死後に常緑性低木種が繁茂した影響が考えられた。NMDSの結果、人為による攪乱履歴のある平野部の地点と鈴鹿山系に隣接した地点は離れて序列化された。人為による攪乱履歴のあった地点において、プロット内の枯死木の胸高断面積合計とNMDSの第一軸との間には有意な相関が認められ、枯死木の割合が種組成に影響していることが示唆された。各プロットにおける枯死木の胸高断面積の割合と、常緑性樹種の胸高断面積の割合との間に正の相関が認められ、マツ枯れやナラ枯れにより上木が枯れた地点では、常緑性樹種の割合が増加していることが明らかとなった。