| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-C-104 (Poster presentation)
両生類の活動は気温や湿度などの外的要因により大きく左右されている。その中で近年注目され始めたのが、月齢である。特定の月齢と繁殖活動の同調や対捕食者への適応が欧米に生息する種を中心に考察されているが、日本に生息する種においては調査が十分ではない。アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)は日本固有種であり、安定な水域で繁殖する集団では1年を通して水場の周辺に生息する種であることから、外的要因の影響を調査するのに適している。そこで本研究では、2016年2月から11月まで、八王子市南大沢において調査地の池(直径約10m、最大深度0.5m)に出現する成体を毎週1から2回日没後目視により観察し、本種の活動に影響を与える要因を明らかにすることを目的とし調査した。季節活動と同時に、夏季と秋季に終夜観察も行い日周活動についても調査した。解析には一般化線形モデル(負の二項回帰モデル)を用い、AICcによりモデル選択およびモデル平均化を行った。観察個体数を目的変数とし、説明変数の候補として気象要因と月齢を用いた。気象要因には調査時の水温、湿度、照度と、調査日の日平均気圧、平均風速、日照時間、降水量を使用した。気圧以降のデータは、AMeDASの東京及び八王子観測所のデータを使用した。一般化線形モデルによる解析の結果、水温及び風速の2要因が重要な要因として抽出された。すなわち、水温が高く、風が弱い日に活動が高まる傾向が示唆された。注目した月齢や照度については、今回の解析では活動への影響を検出できなかったが、今回の調査は樹冠が閉じた林の中にある池であったことが関係しているかもしれない。日周活動については、夏季と秋季のいずれにしても日没とともに急激に観察個体数が増加し、日の出とともに個体数は再び急激に低下した。このように、日周活動には照度と水温が関係していることが示唆されたが、今後調査を繰り返しデータを増やしていく必要があるだろう。