| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-C-113  (Poster presentation)

立山室堂におけるライチョウの資源利用の季節変化

竹内祥生(信州大学総合理工学研究科), *高畠千尋(信州大学山岳科学研究所), 泉山茂之(信州大学山岳科学研究所), 松田勉(富山雷鳥研究会)

採餌や休息に必要な条件を備えた生息場所は野生動物にとって不可欠であり、個体の生存や個体群の維持に不可欠な資源であるといえる。現在、絶滅危惧種に指定されているライチョウの資源に対する嗜好性や要求についての知見が不足している。生息数が減少した原因の究明や、今後の保護活動には生息環境の適切な評価が必要である。そこで、本研究ではライチョウの資源選択性について明らかにすることを目的とした。
富山県立山室堂において、約80haの調査地を設置し、5月から10月までライチョウの直接観察を計90日間行った。高山植物群落をライチョウの生態を考慮して6つに分類し、利用していた群落を行動別に記録した。調査地内にランダムに設定した150地点をライチョウにとって利用可能な環境とし、毎月植生状況を記録した。5.6月を春期、7.8月を夏期、9.10月を秋期とし、Manlyの資源選択性指数を用いて、資源選択性の季節変化を評価した。また、利用環境、利用可能環境ともに、その地点からの隠ぺい物となりえる植生までの距離や調査地内の雪解け状況について記録した。
調査地内での利用可能環境は湿性草原群落が最も多い約31%、ついで砂礫地、ハイマツ及び落葉広葉樹群落が約23%であった。資源選択性については、春期、秋期には採食行動において矮性低木群落、休息行動においてハイマツ群落に有意な正の選択が認められた。夏期には採食行動、休息行動ともに雪田群落に有意な正の選択が認められた。また、天候が悪く、視認性が低いほど隠ぺい物までの距離が大きくなった。
本研究によって雪解けによってライチョウの利用可能環境が大きく変化し、その選択性は行動や天候等の状況によって変化し、季節的にも大きく変化することが判明した。


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