| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-C-115 (Poster presentation)
活発に採餌する個体は交尾行動も積極的におこなうといったように、異なる文脈の行動間に一貫した傾向があることを行動シンドロームと呼ぶ。行動シンドロームがあると適応的な行動が妨げられる可能性もあり、行動の適応進化を阻む重要な制約になり得る。交尾行動と捕食回避行動など様々な行動間の関係がこれまで調べられてきた。しかし、オス機能とメス機能の両方で繁殖可能である同時的雌雄同体生物では、交尾時の性役割とその他の行動間の関係は検証されてこなかった。もし交尾行動とその他の行動との間に行動シンドロームがあれば、最適な性役割とは異なる行動が生じる可能性がある。サカマキガイPhysa acutaは一回の交尾内ではオス役かメス役のどちらか一方しかおこなわず、性役割を判定するのが容易である。そこで、サカマキガイの交尾行動と捕食回避行動との間に行動シンドロームが見られるかを検証した。捕食回避行動の指標として、刺激を受けて殻に閉じこもってから再び活動を始めるまでの時間を用いた。その結果、性役割や交尾時間、交尾率といった交尾行動と捕食回避行動との間には有意な関係は見られなかった。これは交尾行動と捕食回避との間に行動シンドロームが見られないことを示す。一方で、体サイズは交尾行動や捕食回避行動と有意に関係しており、重要な要因であることが示された。