| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-C-119  (Poster presentation)

ニホンジカによる森林被害影響を低減しうる要因の解明

*江口則和(愛知県森林・林業技術センター), 石田朗(愛知県森林・林業技術センター), 栗田悟(愛知県森林・林業技術センター), 高橋啓((特非)穂の国森林探偵事務所), 鈴木千秋((株)マップクエスト), 中村侯太((株)マップクエスト), 佐藤亮介((株)マップクエスト)

シカによる森林被害(シカ害)の低減のため、シカ密度とシカ害との関係を解明することは有用である。一般的にはシカ密度が高いほどシカ害が大きいことが知られているが、シカ密度は5kmメッシュ単位(メッシュ)と比較的広範囲で推定されることが多いため、シカ密度の高いメッシュ内でも被害が少ない箇所があるなど、シカ密度とシカ害との関係は必ずしも明確ではない。そこで本研究では、シカ害の有無に与えるシカ密度及び各種環境要因の影響を解明することを目的とした。
愛知県東部地域における各メッシュ内のシカ密度について、糞塊法、区画法、目撃効率、捕獲駆除数等のデータから状態空間モデルを構築し、階層ベイズ法によって推定した。シカ害の評価は、関連する行政職員や森林組合職員を対象にしたwebアンケートで調査した。アンケート項目は、位置、被害(高木及び下層植生)の有無、森林の種構成、高木種の平均胸高直径(DBH)、林床の明るさ、林床植被率、林床の優占植生、不嗜好性植物(アセビ)の被度とした。被害の有無を応答変数、シカ密度中央値及びその他アンケート調査項目を説明変数とした一般化線形モデルを作成し、AICを基準としたモデル選択によって、被害の有無に影響を与える各説明変数を調べた。
調査メッシュのシカ密度は平均11頭km-1であった。123件のアンケート結果から、高木未被害の要因には、DBHが約30cm以上であること、林床植被率が約86%以上であること、林床の優占種がササ以外であること、アセビの被度が約12%以下であること、が検出された。一方、下層植生未被害の要因には、シカ密度が低いこと以外に、林床の優占種がササ以外であること、アセビの被度が約5%以下であること、が検出された。これら要因のうち、シカ密度以外は、シカ利用頻度の少ない箇所を簡易に判断する基準になるため、シカ個体数管理や森林保護対策の指標として有用だと考えられた。


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