| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-C-123 (Poster presentation)
北関東を流れる利根川水系の支流である渡良瀬川は,足尾銅山由来の高濃度の重金属等が流入した過去があり,現在でも特に上流部の地点において,水中および底質中からは比較的高濃度の重金属が検出されている。本研究では,このような歴史的背景を持つ渡良瀬川と,水源が近く汚染の影響がほとんどない思川において,両河川で生息が確認されているコイ科魚類であるウグイ(Tribolodon hakonensis)を対象として,重金属汚染に対する重金属蓄積応答を調査・理解することを目的とした。
2012年から2013年に渡良瀬川および思川において採捕したウグイ(各30尾)について,全長や体長等を測定した上で,肝臓及び筋肉中の重金属蓄積量(Cu,Zn,As,Pb,Cd,Fe)をICP-MSを用いて測定した。
渡良瀬川および思川のウグイ採捕地点における河川水中の重金属濃度を比較した結果,Cuなど多くの金属濃度が渡良瀬川において数倍以上高かった。したがって,このような重金属汚染状況から,ウグイ組織中の重金属濃度は渡良瀬川で高くなることが予想されたが,ほとんどの場合において2つの河川間で同等か渡良瀬川の方が有意に低かった。特に,重金属の顕著な蓄積が観察される肝臓において,Cu,Feを除いた重金属濃度が渡良瀬川で有意に低かった。発表では,これら渡良瀬川および思川のウグイについて,マイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝的構造の解析結果や金属結合タンパク質であるメタロチオネインの胆汁中濃度の分析結果についても報告する。