| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-C-124 (Poster presentation)
多くの生物種は季節的な環境の変化に応じて、複数の資源を利用しながら個体群を維持していると考えられている。そのため、生物の個体数が増加する仕組みを考えるときに、ある1つの生息地・資源だけではなく、代替生息地・代替資源を同時に考慮することが必要である。このような仕組みは、環境保全型農業を実施する農地で害虫の天敵を増加させるために重要であると考えられる。クモ類は、全国の水田で優占している捕食者であり、古くから水田害虫の天敵として注目されてきたジェネラリスト捕食者である。その特徴から、クモ類の個体数の増加には、ユスリカなどの“ただのむし”といった代替餌の存在が重要となる。また、非耕作期は水田以外の環境を利用せざるを得ないため、代替生息地が必要となる。さらに、中干期は、水田から発生する代替餌の量が減少するため、やはり、代替生息地の重要性が高まる可能性もある。そこで本研究では、アシナガグモ類を対象に、以下の3つの仮設を検証した。①代替生息地の量は環境保全型水田で、慣行栽培水田よりも多くなる、②中干期における代替餌の量は、代替生息地である水路で水田よりも多くなる、③代替餌の量が多いほど、アシナガグモ類の密度が高くなる。アシナガグモ類の餌量・餌組成を正確に評価するため、アシナガグモ類を除去した網にかかっていた生物を採取し、解析を行った。