| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-C-125 (Poster presentation)
アキアカネ等の赤トンボ類は農薬や耕作放棄等よる減少も指摘されており、里地里山環境の重要な指標であるといえる。しかし、従来の調査員による目視に依存した調査方法は天候等の影響を受けやすく、広域・多地点で継続的に調査を実施することは難しい。一方、哺乳類のモニタリング調査等では赤外線センサーを用いた自動撮影カメラが実用化されており、昆虫類でも同様の自動撮影による無人調査ができれば省力化が期待される。そこで、演者らはトンボ類が棒状の構造物の先端に止まる性質を持つことに着目してトンボ類自動撮影装置を試作した。この装置は、棒にとまったトンボの影を検出するセンサーを市販のカメラに接続することで自動撮影を可能にするというものである。
自動撮影装置を野外に設置して実用可能性を検討した結果、アキアカネやノシメトンボ等の代表的なアカネ属の自動撮影に成功し、単純な撮影アルゴリズムでも自動撮影が可能であることが示唆された。また、カメラ部分は数週間で電池が切れるものの、センサー部分は単三電池3本で約二ヶ月稼動し続けることが可能だった。センサー部分の材料費が極めて安価であることも踏まえると、多地点に赤トンボ類の調査に最低限必要な期間設置することは十分に現実的と言える。
今後、トンボの検出アルゴリズム等の改善や、接続カメラを変更することで、より精度が高く情報量が多い自動撮影が可能になることが期待される。また、自動撮影の結果がどの程度トンボの個体密度を反映するかという定量性の検討が課題となるが、少なくとも密度が低い地域では有効な無人モニタリングツールとなることが期待される。