| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-135  (Poster presentation)

アブラムシ捕食性ゴイシシジミ幼虫の体毛がもつ兵隊アブラムシに対する防御機能

*服部充(長崎大学大学院・水産環境科学総合研究科), 乾陽子(大阪教育大学・教養学科), 山本哲也(信州大学大学院・総合工学系研究科), 市野隆雄(信州大学・理学部, 信州大学・山岳科学研究所)

鱗翅目などの幼虫は、捕食者などに対し体毛による物理的防御など様々な形質を示すと考えられている。しかし、体毛の防御機能については現在もよくわかっていない。そこで、本研究では、兵隊アブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫の体毛に着目し、被食者である兵隊アブラムシの攻撃に対する体毛の防御機能を明らかにしようと試みた。ゴイシシジミは、真社会性アブラムシのササコナフキツノアブラムシを主に捕食する。1, 2齢のゴイシシジミ幼虫は、自身で吐いた糸によるテント状の巣の中で生活する。3齢以降の幼虫は、巣を放棄し自由生活を始める。この際、手近なアブラムシに体をこすり付けアブラムシの体表面ワックスを身にまとう。一方でササコナフキツノアブラムシは、ゴイシシジミの幼虫を物理的に攻撃する兵隊を産出する。この兵隊は、他の個体に比べて発達した前脚と頭部のツノをもち、これらによりゴイシシジミの幼虫を攻撃する。したがって、自由生活を行うゴイシシジミの幼虫は、ササコナフキツノアブラムシの兵隊から自身を守るなんらかの防御形質をもつことが期待される。そこで、我々は、ゴイシシジミの幼虫の体毛が兵隊からの攻撃を防ぐ役割があるのではないかと予測した。まず、ゴイシシジミ幼虫の体毛長がテント内で生活している個体よりも自由生活している個体で長いことを確かめた。次に、体毛長を人為的に操作し、体毛の長さによって兵隊からの攻撃されやすさが変わるかどうか検証した。この結果、体毛の短い個体ほど兵隊から攻撃されやすいことが明らかになった。次に、ゴイシシジミ幼虫の体表面炭化水素を調べた。この結果、ゴイシシジミ幼虫はその体表面にササコナフキツノアブラムシがもつ化学物質を複数もっていることが明らかになった。これらの結果は、ゴイシシジミ幼虫の体毛が、自由生活をするうえで重要となる兵隊アブラムシに対する防御機能をもっていることを示唆している。


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