| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-136  (Poster presentation)

東シナ海における外洋性昆虫Halobates属3種個体群の季節変動

*井川輝美(盛岡大学), 岡部秀彦(産業技術総合研究所), 星崎杉彦(東京大学), 佐々木幹雄(盛岡大学), 菅原静(盛岡大学), 竹谷里栄(盛岡大学), 小笠原理斗(盛岡大学), 田村美保(盛岡大学), 石井美菜子(盛岡大学), Lanna CHENG(UCSD)

現存する昆虫の種数は約100万種であり、全動物の総種数の半数を超える。しかし、海洋に生息する昆虫は極めて少なく、外洋に生息するのはHalobates属に属する5種のウミアメンボのみである。Halobatesは太平洋・大西洋・インド洋の熱帯亜熱帯海域の表面に広大な分布域をもつことが、長年の採集記録の集大成から知られるようになった。しかし、同じ海域での定期的研究航海の実施が困難であるため、外洋性Halobates個体群の季節変動・年次変動等について知られていることは少ない。日本近海には、3種の外洋性HalobatesH. micans, H. sericeus, H. germanus)が生息する。本研究では、東シナ海において1995年から2010年までの様々な季節に行われた研究航海で採集されたHalobatesの個体群密度、種構成を調べ、その変動について解析した。また、雌成虫は解剖し、保有する成熟卵・亜成熟卵の個数、成熟卵のサイズを調べた。海表面水温が低い3月、Halobatesは全く採集されなかった。5月、6月、7月上旬は、採集個体はH. sericeusが大勢を占めた。しかし、7月下旬から、H. germanus, H. micansの密度が上昇し始めた。9月、10月には、H. germanusが大勢を占め、H. sericeusの密度は非常に低くなった。10月下旬には、Halobatesは、全く採集されなかった。一方、全航海において、採集された雌成虫の大部分が成熟卵を有していた。卵のサイズは、H. germanusが最も大きかった。1雌当たりの保有卵数は、体のサイズの最も大きいH. micansが最も多く、次に、H. germanus, H. sericeusであった。これらの結果から、東シナ海における3種の繁殖戦略について考察した。


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