| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-D-142 (Poster presentation)
森林面積の減少・劣化が続くタイ南部ナラチワ県の2箇所の保護区(ブードー・スンガイパディ国立公園とハラ・バラ野生生物保護区)において、3年間の捕獲調査を行い、森林利用(伐採と果樹園化)が地上性小型哺乳類群集に及ぼした影響を解明した。2004年10月にブードーの択抜林と果樹園、バラの原生林と択抜林にそれぞれ5箇所の調査区(100×10m)を設定した。各調査区の胸高直径10cm以上の樹種を記録し、毎月、結実フェノロジーを記録した。捕獲調査(22ワナ/調査区、連続4日間)は年3回(2、6、10月)、のべ調査回数はブードー7回(572ワナ/調査区、2004-2006年)、バラ11回(836ワナ/調査区、2004-2007年)だった。いずれの森林でも開花は2月から4月の乾季、結実は6月にピークが見られた。計6科19種801個体の小型哺乳類(ツパイ科2種105個体、ハリネズミ科2種5個体、トガリネズミ科1種2個体、ネズミ科8種670個体、リス科5種18個体、ジャコウネコ科1種1個体)を捕獲し、個体数上位はMaxomys surifer(36.8%)、Leopoldamys sabanus(14.2%)、Rattus tanezumi(13.1%)、Tupaia glis(12.9%)だった。果樹園での捕獲種数・個体数が多く(16種・695個体)、10種は果樹園でのみ捕獲された。Rarefaction curveから推定した種多様性は果樹園で高く、残りの森林間では差がなかった。捕獲個体の種構成も果樹園をのぞいた調査区間で高い類似度を示した。果樹園では、森林性の種と侵入種の両方が捕獲され、地上性小型哺乳類の種多様性・個体数ともに高い結果となった。ブードーの果樹園は複数の果実種が植栽され、林床草本も発達しており、餌資源が多い可能性が高い。果樹園は標高が低いところはゴム園、標高が高いところは択伐林に隣接しており、周辺から小型哺乳類が果樹園に侵入している可能性が考えられた。