| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-143  (Poster presentation)

厚岸湖におけるアマモ葉上動物群集に対する養殖カキの影響

*橋本真理菜(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所), 伊藤美菜子(北海道大学環境科学院), 難波瑞穂(北海道大学環境科学院), 百田恭輔(北海道大学環境科学院), 仲岡雅裕(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所)

 北海道東部の厚岸湖のアマモ場では、稚貝を付着させたホタテの貝殻をロープで吊るす垂下式と呼ばれる方式でカキ養殖が行われている。しかし本来アマモ場内に存在しないカキの人為的導入は、アマモ場の生物群集に影響を与えていることが懸念される。そこで本研究では、カキ養殖がアマモ場の動物群集に与える影響について、カキ養殖場付近と離れた地点の比較、およびカキ種苗導入後の時間経過に伴うアマモ葉上動物群集の変化を追跡することで検証した。
 厚岸湖内猫の沢の養殖場付近で、カキの種苗を導入して1ヶ月後の6月と、3ヶ月後の9月に、アマモの葉上無脊椎動物を採集用ネットによりアマモごと採取した。採取されたサンプルを実験室に持ち帰り、葉上動物については種数と各種の個体数、アマモについては葉面積とシュート密度を計測した。
 葉上動物群集の総個体数と種数については、養殖カキからの距離による地点間、および種苗導入後の時間経過に伴う有意な差は検出されなかった。種構成については、6月には地点間にほとんど違いはなかったが、9月には違いがみられた。アマモの密度と葉面積については、地点間で有意差はなかったが、6月から9月にかけて、葉面積は有意に減少した。
 アマモの密度や葉面積はカキ養殖場からの距離により変化しなかった一方で、葉上動物の種構成は種苗導入後の時間経過に伴い変化が生じたから、カキ養殖がアマモ葉上動物群集に影響を与えていることが示された。今後は、カキの貝殻に形成される動物群集との比較を通じて、アマモ場動物群集への影響の詳細なプロセスを明らかにしていく予定である。


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