| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-D-144 (Poster presentation)
これまで、トビムシ、ササラダニ群集の住み場所の選好性は、土壌由来の要因か地上部環境の要因かを区別できなかった。この研究では、針葉樹人工林と広葉樹林の落葉層および土壌層を土壌ブロックとして採取し、それを互いの森林間で入れ替える手法で土壌要因の重要性の検討を行った。茨城県北部のスギ林と落葉広葉樹林が隣接する調査地を3箇所設定した。それぞれの森林から合計80個、土壌ブロック(125cm3)を採取した。土壌ブロックのうち、半分は-20度で凍結殺虫した。残りの半分は非撹乱の状態に保った。また半分は同じ森林に戻し、残りは他方の森林に移動させた。設置後1週間後、1ヶ月後、10ヶ月後、13ヶ月後に土壌ブロックを回収し、土壌動物を抽出した。以上から、非撹乱と殺虫のそれぞれの処理で、土壌ブロックの属性(スギ林土壌、広葉樹林土壌)、設置した林分の属性(スギ林、広葉樹林)のトビムシ群集に与える影響を検証した。個体数及び種数に対する土壌の効果は、いずれもスギ林土壌で多くなる傾向を持ち、これはスギ林土壌の有機物量が多いのと、含水率が高いことが原因と考えられた。土壌の効果は殺虫区では実験の初期のみに見られたのに対し、非撹乱区では実験後半でも見られた。Distance based linear modelにより、種組成のばらつきを説明する土壌の効果の影響は、特に実験の後半では認められにくくなっていた。広葉樹林あるいは、スギ林を好む種のうち、それぞれから得られた土壌を選好する種(林分の属性と土壌ブロックの属性が一致する種)の割合は最大で0〜44%であった。また、広葉樹林の林分と土壌の属性が一致する種は少ない傾向があった。以上から、広葉樹林のトビムシの群集構造にあたえる土壌の要因の影響が認められるものの、林分の属性による違いの全てを説明できるわけではないと考えられた。