| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-D-145 (Poster presentation)
群集に対する撹乱のインパクトの大きさは群集の抵抗性(community resistance)によって評価できる。種組成を基準とした群集の抵抗性は種の残存率(攪乱後にどれくらいの種が残っているか)によって定量的に評価できるが、同時に群集の抵抗性の中身(どのような種が攪乱後に残ったのか)の理解も重要である。なぜなら、それらの情報は群集の抵抗性の大きさの決定メカニズムと、撹乱後の群集の回復過程を理解する上で決定的な意味を持つからである。
東北地方太平洋沖地震は巨大津波と沈降を引き起こし、岩礁潮間帯固着生物の群集組成を大きく変えたものと考えられる。なぜなら、岩礁潮間帯固着生物群集には、津波の直撃に加え、沈降による生息地の環境の変化が引き起こされるからである。このような巨大地震は、周期的に起こるにも関わらず、固着生物の群集組成への影響や、影響を受けやすい種についてはほとんど理解されていない。
本研究は東北地方太平洋沖地震の8年前から4か月後にかけて、岩手県沿岸の23サイトで得られた固着生物の群集動態データを用い、サイト単位での種残存率(種組成を基準とした群集の抵抗性の強さの尺度)と種ごとの残存率について地震の影響を定量評価した。解析結果から岩礁潮間帯固着生物群集における地震に対する群集の抵抗性の強さの決定機構と、地震後の群集の回復過程の変異性について考察する。