| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-D-153 (Poster presentation)
シロアリの腸内にはパラバサリア類、オキシモナス類に属する多数の嫌気性共生原生生物が複数種生息しており、それらはシロアリが摂取した木材の分解に大きく寄与している。原生生物群集は、その種構成が、宿主であるシロアリの種に特異的であるという際立った特徴をもっている。原生生物群集の種構成については様々なシロアリの種で以前から調査されてきたが、生きた状態での原生生物の同定が難しいこともあり、各種の原生生物がどれくらいの個体数を占めているのか、また同種の宿主であっても群集構造にコロニー間でどの程度変異があるのかなど、詳細な量的な調査は少ない。また近年、ヤマトシロアリReticulitermes speratus では、共生原生生物の種によっては、個体数に宿主の性別による差異があるという結果が初めて報告された。
そこで本研究では、沖縄本島に生息するオキナワシロアリReticulitermes okinawanus の野外コロニーを採集し、腸内共生原生生物の染色標本と生体を比較することで10種(12の形態型)を同定した。さらに、野外コロニーのワーカーの腸内容物を調べ、コロニー間、雌雄間での原生生物の個体数の変異を調査した。生きた原生生物の個体数の計数は透過型顕微鏡と血球計算盤を用いて行った。PERMANOVAを用いた解析の結果、各コロニー内の巣仲間の間では各種の原生生物の群集構造は類似し、コロニー間では有意に類似性が低かった。また、雌雄の違いも有意に類似性に影響を与えたが、用いた距離に結果は左右されるため、慎重な解釈が必要と思われる。