| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-E-162 (Poster presentation)
近年、湖沼や河川から採取した1L程度の水を調べて、動物の排泄物などに由来したDNA断片(環境DNA)の有無から、対象種の在不在を明らかにする環境DNA技術の確立が進んでいる。一方で、環境DNAの量から対象動物の個体数や生息量を正確に評価するためには、まだ不明瞭な点もある。例えば、室内実験等で得られたDNA量から生物量を推定するモデル式を実際の野外データに適用した際に大きな誤差が生じてしまうことなどが挙げられる。そこで本研究では、環境DNAを用いた生物量推定法の精度向上を目的として、カワバタモロコをモデルケースにした以下の実験と調査を実施した。まず、カワバタモロコの個体数や生物量と環境中のDNA量の関係を詳細に調べる室内実験と野外実験を行い、カワバタモロコのDNA量と個体数や生物量には強い正の相関関係があることを明らかにした。また、水質の違い(ため池の水、水道水)による環境中のDNAの分解速度について調べたところ、ため池の水の方が水道水よりも顕著に分解速度が速いことを明らかにした。つぎに、野外調査によって、ため池に分布するカワバタモロコの生息数推定を実施した。標識再捕法と上記の実験で得られたモデルから算出された環境DNA手法による推定生息数を比較し、環境DNAを用いた生物量推定法の精度向上に向けた議論を行いたい。