| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-E-165 (Poster presentation)
酷暑による牛の乳量低下や、鳥インフルエンザの流行など、近年、家畜に関わる様々な問題が顕在化している。このような高温や感染症などに在来家畜は耐性を持つことが知られており、在来家畜の持つ性質は、さらに深刻化する家畜関連問題を解決するための重要な遺伝資源となる。一方で在来家畜品種と改良された単一品種との交雑は、その貴重な遺伝資源は消滅の危機の大きな一因となっている。本研究では、日本在来家畜の対州馬を研究対象とする。対州馬は交雑記録が残っており、交雑の回数やタイミングがわかっているため、遺伝子浸透からの復帰のモデルケースとして適切な研究対象である。対州馬を例に、他の在来家畜・非モデル生物でもすぐに利用できるRAD-seq法によりゲノムワイドなSNP検出を行い、遺伝的多様性の維持と外来品種の遺伝子浸透からの復帰方法の確立を目指す。本発表では、対州馬38個体、他の在来馬18個体を用いてRAD-seqを行い、計866,343コンティグ、104,692SNPsを得ることに成功した。そのうち75%以上の個体が共通して持つSNPsのみを利用し解析を進めたところ、対州馬は他の在来馬に比べ、ヘテロ接合度が低くなっており、遺伝的多様性の保持が急務であることわかった。また副次的に、得られたSNP情報から対州馬の特徴と一致する、選択の痕跡がみられる遺伝子が検出された。発表では、より詳細な解析結果を含め、対州馬の遺伝的多様性と遺伝子浸透状態について報告し、ゲノムワイドなSNPの利用が在来家畜の保全においてどのような役割を果たせるのか議論したい。