| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-E-173  (Poster presentation)

東日本大地震後の仙台湾南部海岸林のオオタカ営巣環境

*平泉秀樹(仙台湾の水鳥を守る会)

2011年3月の東北地方太平洋沖地震による津波で仙台湾南部沿岸の砂浜海岸の海岸林は大きな被害を受け、環境省生物多様性センター(2013)によると宮城県の仙台市以南の浸水域内のクロマツ林は1割程度を除き消失した。海岸林には以前からオオタカが繁殖していることが知られており、営巣環境や採食環境には大きな変化があったと考えられたため、津波の翌年の2012年の繁殖期から仙台市から山元町の範囲(南北約40km)の海岸残存林で猛禽類の繁殖状況の調査を開始した。数ha以上のまとまりのある海岸林は6地域に残存していたが、その全てでオオタカの営巣が確認され、2012年と2013年には抱卵が認められた9巣のうち抱卵初期に放棄した2巣を除く7巣から幼鳥20羽が巣立ち、繁殖成功率も高かった(ただし、その後状況は悪化し、最近2年間は各1つがいしか巣立ちが成功していない)。
今回は、営巣環境として巣から半径300mの範囲(営巣中心域)、採食環境として海域を除く巣から半径250m〜1km、1〜3kmの2つの範囲について環境省の津波前後の植生図から環境解析を行った結果を報告する。まだ一部解析途中であるが、半径3kmの範囲はほぼ冠水しており、営巣中心域内の巣を含む林は地震前(約10〜18ha)の平均20%程度(6.5〜30.8%)しか残存していない。一方、林縁から150m以内の採食適地(高利用域)の面積は平均75%程度は残存しており、250m〜1kmの範囲では林の分断により増加した地点もあった。営巣環境はかなり悪い状態にあるが、採食環境はそれほど悪化しておらず、高い繁殖成功率の一因となっていた可能性がある。地点数は少ないが地震以前の営巣情報のある海岸林や仙台市の丘陵部の営巣地についても環境解析中であり、良い比較結果が得られればそれについても報告する予定である。


日本生態学会