| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-E-175 (Poster presentation)
2007年に新たに確認された群馬県内の里山のヒメアマナ(絶滅危惧IB類)群生地において、その後1〜3年おきに4月中下旬に開花個体数調査を実施したところ、標本抽出調査(2008-2013年)および全数調査(20015-16年)で約500〜1600となり、2013年以降は、2007年に植林されたコナラの生長による被陰にもかかわらず、イノシシ等のケモノ道沿いで増加傾向にある。2007年の推定開花個体数を約6000と報じた(2008年生態学会ポスター講演)が、これはサブプロットの一つで過大評価になっていたと推察される。個体あたり開花数は最大8花で、いずれの調査年においても2花の個体数が最も多く、次いで1花、3花個体であり、4花以上の個体は非常に少ない。2007年に一部の開花個体(n=27)を掘りあげて鱗茎サイズおよび娘鱗茎数を計測した結果、本種は鱗茎の長径6.5mm付近を限界サイズとして、鱗茎サイズと個体あたり開花数の間に強い正の相関があることが確認された。また本種は鱗茎の長径5mm以上で娘鱗茎を生産して(1〜6個)栄耀繁殖を行うが、鱗茎サイズと娘鱗茎数の間には有意な相関は見られなかった。2008年に結実率を計測した(n=80)ところ、結実した個体の比率と個体あたり開花数の間には強い正の相関があることが示されたが、個体あたりの結実数(0〜3個)と個体あたり開花数の間には有意な相関がみられなかった。すなわち本種においては、栄耀・有性繁殖とも限界鱗茎サイズがあり、開花数も鱗茎サイズに依存しているが、いずれの繁殖様式でも生産される子の数は鱗茎のサイズに依存していないと推察される。以上より本種は限界鱗茎サイズ以上の個体が有性・栄養繁殖双方を行うことで主に1〜3花サイズの個体数が増加しており、また植林や動物による攪乱が個体群の拡大を促進している可能性が示唆された。