| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-E-176 (Poster presentation)
ミツバチは、野生植物・作物の送受粉や蜂蜜の生産などの複数の生態系サービスの提供に寄与することから、生態系サービス評価における指標生物となることが期待される。本研究は、岩手県一関市の里山において、在来種ニホンミツバチの生態系サービスの提供の基礎となる、花とミツバチコロニーの相互作用について明らかにするために、働き蜂が巣に持ち帰る花粉荷の採集と分析により、採餌に利用する植物種およびランドスケープ要素の季節的変化を把握した。
各季節に採集した花粉荷に占める、落葉広葉樹林に生育する植物の花粉荷の割合は、春季は91%、初夏は83%であり、営巣場所周囲の半径2km (平均的な採餌動距離)における落葉広葉樹林の面積が占める割合に比して、多く利用されていた(P < 0.05)。初夏は、落葉広葉樹林の低木、高木、木本性のつる植物の利用が100%を占めており、落葉広葉樹林の中で優占して開花していたウメモドキIlex serrata Thunb.は、この時期コロニーの主要な花粉源となっていた。秋季は、落葉広葉樹林における開花植物が減少し、アレチウリSicyos angulatus L. やカナムグラHumulus scandens (Lour.) Merr.などの、農耕地や河川敷に生育する草本類の花粉荷の利用割合が66%に増加した。
これらの結果は、ミツバチが営巣場所周囲の開花植物の時空間的な変動を反映した採餌活動を行うとともに、春から秋まで林床部の草本層、低木層、高木層まで幅広い階層の多様な植物種から採餌し、それらの送粉に寄与する可能性を示唆していた。また、春季から夏季にかけて集中的に開花する落葉広葉樹林は、コロニーが成長し繁殖を行うにあたり、餌資源としても重要であると考えられた。