| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-E-177  (Poster presentation)

水田における植物の種多様性を簡易に評価する手法

*池田浩明, 楠本良延(農業環境変動研究センター)

近年、農地を利用する生物種の減少が指摘されており、農業と生物多様性保全の両立が喫緊の課題となっている。その方策として、化学農薬・肥料の使用を低減する環境保全型農業の貢献が期待されているが、環境保全型農業の取組が植物の多様性保全に及ぼす効果を評価する手法は確立されていない。これを受けて昨年の大会では、有機(無農薬)栽培水田に特徴的に出現する指標植物種を報告した。植物の多様性評価は、出現種の同定という専門的な作業を要するため、一般向けではない。そこで本大会では、前述の指標植物種を活用した植物多様性の簡易評価について検討した。
茨城・栃木県における有機栽培水田の指標植物は、田面でウキクサ、シャジクモ、ハリイが、畦畔でイヌガラシ、イボクサ、オオバコ、カモジグサ、スイバ、チドメグサ、ヘビイチゴ、ヨモギがそれぞれ選定された。これら指標種の種数で田面の植物の総種数を推定できるか否かを判断するため、回帰分析を行った結果、田面の指標種数では、R2=0.59の有意な正の関係が認められた。一方、畦畔の指標種数では回帰係数が有意ではあるものの、R2は0.21に低下した。また、田面の指標種が2種以上出現するのは有機栽培だけで、多数の圃場が該当したが、畦畔の指標種では7種以上の出現が必要で、該当した圃場数もきわめて少なかった。
したがって、田面の植物総種数は、田面の指標植物の種数で代替可能であるが、畦畔の指標植物の種数では代替性の程度が低下することが明らかになった。
なお、本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「収益力向上のための研究開発」の成果である。


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