| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-E-182 (Poster presentation)
我が国では1980年代以降、米価の低下や農業人口の減少・高齢化にともない耕作放棄地が増加し続けている。耕作放棄は、二次的自然の喪失を通じて生物多様性を低下させることが危惧されている。しかしその一方で、再野生化(再自然化)のチャンスと考えられることもある。実際に、耕作放棄が生物多様性に正負どちらの影響をもたらすかは、対象とする分類群や景観・土壌などの立地条件によって異なる可能性がある。しかし、こうした状況依存性のあり方はいまだ解明されていない。そこで本研究は、日本でこれまでに実施された水田の耕作放棄‐生物多様性研究をレビューし、影響の正負、分類群、遷移状態(休耕・放棄)、調査地の景観構造(平地・谷津田)、土壌の乾湿などの情報を抽出した。Random Forestによる機械学習の結果、種数への負の影響の大きい順に、遷移状態(放棄>休耕)、景観構造(谷津田>低地)、分類群(植物・両生類・虫>鳥類・哺乳類)、土壌(乾燥>湿潤)となった。この結果は、耕作放棄と生物多様性の関係は一概に正とも負とも言えず、対象とする地域の生物相や環境条件によって複雑に変化することを示唆した。