| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-E-183  (Poster presentation)

赤外線センサーカメラがとらえた高山帯の哺乳類相・鳥類相:後立山連峰,爺ヶ岳・岩小屋沢岳の事例

*堀田昌伸, 尾関雅章(長野県環境保全研究所)

 近年,ニホンジカなど大型草食性哺乳類の高山帯への侵入による植生被害が問題となっている.特に南アルプスや八ヶ岳ではニホンジカの採食圧増加による植生変化が顕著であり,北アルプス山麓でもニホンジカの定着が確認されている.また,イノシシによる掘り起こし等の植生被害も乗鞍岳など一部の高山帯で報告されている.他地域に先駆けて北アルプス後立山連峰の爺ヶ岳及び岩小屋沢岳周辺において,2007年に環境省,2011〜2012年に長野県により,センサーカメラによる哺乳類相・鳥類相の調査が実施された.2013年以降、長野県環境保全研究所がその調査を継続し,高山帯の哺乳類相や鳥類相を把握するとともに,高山帯へのニホンジカ等の侵入・定着状況をモニタリングしている.
 6月中下旬から10月中旬までの約3ヶ月半,センサーカメラを7, 8台設置した.その結果,最も多く撮影された哺乳類はニホンザルで,他にキツネ,ノウサギ,テン等であった.鳥類では,ライチョウが最も多く,他にホシガラスやイワヒバリ等が撮影された.
 2012年までは,ニホンジカとイノシシは撮影されなかったが,2013年にニホンジカが3回,2015年にイノシシが8回撮影され,それぞれ北アルプス北部高山帯での初確認となった.ニホンジカは,その後も,2014年に5回,2015年に4回,2016年に16回撮影された.イノシシについては,2016年にも1個体が撮影されるとともに,2016年10月にイノシシによる掘り返しが種池山荘付近で確認された。北アルプス北部におけるイノシシによる高山植物の掘り返しは,初の確認事例と考えられる.一方,同地域におけるニホンジカによる高山植生の顕著な変化はこれまで観察されていないが,哺乳類・鳥類相の把握にあわせて,定期的に植生調査を実施し,高山植生への影響を検出・把握したい.


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