| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-E-185  (Poster presentation)

自動録音装置による生物相の季節変動の把握

*阿部聖哉(電力中央研究所)

野外における生物相の調査は目視観察による種類の把握が主体であり、調査を行う時期についてはそれぞれの分野での経験的な知見をもとに決められていることが多い。鳥類、両生類、昆虫類の一部については、鳴き声により種の記録が行われることも少なくないが、それぞれの生物群が盛んに鳴く日や季節は気候に応じて変動するため、調査に適した時期は生物群によって異なると考えられる。しかし、録音機によって記録された生物種の季節変化を詳細に分析した事例はこれまでにあまり見られない。近年、録音機器の性能が向上し、自動でタイマー機能を用いて長期間連続録音できる野生生物専用の録音装置が利用できるようになってきた。設置場所の緯度・経度をプログラムに入力するだけで、日の出や日没の時間を計算し、それらを起点としたタイマー録音が可能になってきている。そこで本研究では、日の出直後の生物のコーラス(dawn chorus)に着目し、5分間の聴き取りによって把握可能な生物種の季節変動を調査した。赤城山麓のアカマツとコナラの混交する二次林(標高580m)に録音機を設置し、2015年4月28日から12月29日までの毎日、連続でタイマー録音を行った。聴き取りの結果、哺乳類1種、鳥類44種、両生類1種、半翅目昆虫3種、直翅目昆虫4種が記録された。哺乳類は10月、両生類は5月にそれぞれわずかに記録されたのみであったが、半翅目昆虫は7月中旬から8月中旬、直翅目昆虫は8月中旬から10月下旬にそれぞれ継続的に記録された。鳥類の記録種数は雨量や風速の変化に応じて激しく変動したものの、5月下旬にピークなったのち緩やかに減少し、8月~9月にかけて少なく、10月以降ふたたび増加する傾向を示した。こうした記録種の変化は、日長や気温などの気象要因がそれぞれの種の活動に影響を与えた結果、生じた季節的なパターンであると考えられる。


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