| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-189  (Poster presentation)

島根県三瓶山麓の刈り取り草原における絶滅危惧植物スズサイコの動態

*井上雅仁(島根県立三瓶自然館), 高橋佳孝(西日本農業研究センター)

スズサイコは,北海道から九州の日当たりのよい山地の乾いた草原に生育する多年草である.主な生育場所である半自然草原の多くは,管理放棄などにより面積が減少しており,本種は43の都道府県で絶滅危惧種に,2の都県で絶滅種になっている.
島根県三瓶山の山麓には,部分的ではあるが半自然草原が残っている.北の原と呼ばれる箇所には,刈り取りで維持されている草原域が残っており,まとまった数のスズサイコがみられる.個体の分布状況や開花結実などの基本的な生育特性を把握することは,当地における今後の保全や管理方法を検討する上で重要とみられる.
そこで,三瓶山北の原の草原域に20m四方の調査区を設け,2003年から2006年にかけて個体群の調査を行った.調査区内の各個体の位置を記録するとともに,繁殖状況として開花・結実の有無,個体サイズとして根際直径と高さを記録した.また生育環境に関する項目として,調査区を50cm四方に区切ったのち,これらの区毎に優占種,植生高,植被率を記録した.
2003年から2006年にかけての個体数の推移は,280個体,303個体,284個体,293個体であった.そのうち開花個体数は58個体,47個体,40個体,1個体,結実個体は13個体,14個体,14個体,0個体であった.実生の個体数は2004年以降に記録したが,それぞれ16個体,19個体,22個体であった.根際直径と開花との関係は,根際直径が1.0mm以下の個体では開花がほとんどみられず,開花個体の多くは根際直径が1.0mmから2.0mmの,出現した中では大型の個体であった.
2006年は,過去3ヶ年に比べ開花・結実個体が大幅に減少した.調査地の刈り取りの頻度は,2003年から2005年は年1回11月であった.一方2006年は7月と11月の年2回行われており,夏季の刈り取りが本種の繁殖を著しく抑制したことが認められた.


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