| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-F-196 (Poster presentation)
埼玉県では、生物多様性保全の一環として、絶滅が危惧されている動植物についてレッドデータブック動物編と植物編を作成し、それらの保護を推進している。しかしながら、行政が絶滅危惧種に関するコンサルティングや保全活動の支援などを実施しようとする場合や、その分布状況などについて解析しようとする場合、レッドデータブックに記載されている情報のみの把握では不十分である。
そこで、本研究では、埼玉県における絶滅危惧植物の分布や生育状況、減少要因などの基礎的情報を、レッドデータブック作成時に実施した分布確認調査のデータを中心に収集し、それらに基づいて埼玉県の絶滅危惧植物に関するデータベースを構築した。このデータベースには、県内約5900地点で得られた絶滅危惧植物602種に関する情報が収納されている。また、このデータベースを用いて、県内における絶滅危惧植物の分布状況や減少要因などについて、市町村別に解析を試みた結果、以下のことが分かった。
1)県内で絶滅危惧植物が確認された地点のうち、秩父市の確認地点数が最も多く、次いで小鹿野町、飯能市、越生町、さいたま市の順に多かった。また、絶滅危惧植物の確認地点数が多い市町の多くが秩父地域とその近隣地域にあった。
2)絶滅危惧植物の確認地点数が多い上位5市町で確認された種の数をみると、特に秩父市では多くの絶滅危惧植物種が確認され、絶滅危惧の程度を表すカテゴリー別にみても、すでに絶滅の危機に瀕している「絶滅危惧Ⅰ類」に属する種の割合が高かった。
3)秩父地域とその近隣地域でも、特に、秩父市、小鹿野町、飯能市及び越生町を中心に絶滅危惧植物が多く分布し、その主要な減少要因として、自然遷移、森林伐採・整地、園芸採取、動物(シカ)食害および石灰採掘が挙げられた。