| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-F-197 (Poster presentation)
東日本大震災を引き起こした津波や地盤沈降によって,沿岸域では甚大な被害を受け,海岸部の砂浜植生や防潮林にも多大な影響を与えた。砂浜植生は発災当年から再生している場所もあり,津波では地上部の枯損などの影響はあったものの,地下部に根茎が残存している場所では,比較的速やかな再生が見られた。一方,地盤沈降によって,海浜植物の生育範囲が狭まることによる影響が大きいと考えられる。特に,岩手県のように砂浜の幅・面積が小さい海岸が多数を占める場合,その影響は大きい。
発災後の岩手県の海浜の海浜植物の植物相を研究(島田ほか2014)によれば,岩手県の海浜のうち,種の供給源となる多くの海浜植物を有している海浜は18ヶ所と少ない。これらの海浜においても復旧工事が行われる場所も多い。その場合,海浜植物の生育地が一時的な工事用地(工事車両用道路やヤード)になり,生育地が消失することがほとんどである。現地保全が試みられていたり,絶滅危惧種の移植などが行われるケースもあるが,種の供給源となる海浜が減少する恐れがあり,その保全対策が必要である。
岩手県内の幾つかの海浜において砂浜植生の保全対策が講じられている。筆者が関わった事例である野田村十府ヶ浦,山田町船越,釜石市根浜などについて紹介する。
野田村十府ヶ浦と山田町船越では,①現地保全区の設置,②根茎や種子を含んだ表土の移植と工事終了後の再移植,③種子や根茎による苗づくりと工事終了後の移植,④種子を保存し工事終了後に砂浜に播きだしを行うことで,海浜性種の保全を行うことになった。船越では,近くの小学校と協働で海浜植物の苗づくりを始め,仮移植地への移植を行うことができた。この授業は来年度も継続して行われる予定である。
根浜では,防潮堤の内側に残存している海岸林において,海浜植物の生育環境を整える活動が行われている。