| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-199  (Poster presentation)

市民調査によるサクラソウ分布調査を活用した生育適地の推定

*今城治子(軽井沢サクラソウ会議), 増井太樹(岐阜大・流域圏センター)

軽井沢サクラソウ会議は町花サクラソウと町の生物多様性の保全を目的として活動している。町にはサクラソウの自生地が数多くあったが、1970年代の開発によって自生地の多くが失われた。
サクラソウ会議では2010年から軽井沢町全域を対象として、サクラソウの分布調査を開始した。これにより、今なお町内に多数のサクラソウ自生地があることが明らかになった。
サクラソウの生育には、明るい林床、土壌水分が高いなどの環境条件が必要ということがすでに指摘されているが、広域での地質、土壌、人間の土地利用の変遷との関連は明らかにされていない。経験的に、湿地や水田付近、草原、古い別荘地周辺に多い気がしており、土地利用との関連が示唆された。そこで、過去の5万分の1地形図の地図記号を判読し、1912年、1937年、1952年、1962年、1997年の5年代分の土地利用図を作成した。作成した5期の土地利用図および地質図と土壌図の7種類の図面とサクラソウ調査で得られたサクラソウの分布位置と開花個体数をもとに、生育域予測に用いられるニッチモデルMaxentを用いて土地履歴によるサクラソウの生育適地を推定した。その結果、AUC=0.828となり、特に地質の寄与率が高く、川・湖成堆積物の地質で出現確率が高くなった。次いで土壌の寄与率が高く、クロボク土壌で出現確率が高くなったが、過去100年間の土地利用が現在のサクラソウの分布に及ぼす影響は大きくなかった。本研究で得られた結果にもとづきサクラソウ生育地予想図を作成した。「全町調査」といっても調査員の生活圏外で悉皆的に調査を行なうことは困難であり、得られたサクラソウ生育予想図をもとに来年度以降調査を行い、この予想図が実際にどの程度的確であるか検証したい。


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