| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-F-201 (Poster presentation)
ネオニコチノイド農薬(以下、ネオニコ)は、昆虫の神経系シナプス後膜のニコチン性アセチルコリン受容体に作用する殺虫剤で、選択毒性の高さと農作業の省力化等の利点から、ここ20年の間に、世界中に広く普及してきた。しかし、その一方で、ハナバチ類の減少要因として疑われるなど、非標的昆虫への影響が懸念されている。また、最近では、急性毒性のみならず、亜致死濃度における影響や農薬以外の影響要因との複合的なリスクも議論されている。そこで、我々は、近年深刻化しているミツバチのダニ寄生症にネオニコが影響を及ぼしている可能性について着目した。
アカリンダニAcarapis woodi (以下、ダニ)は、体長0.1mmの微小な寄生ダニで、ミツバチの胸部気管内で繁殖し、宿主の飛翔および発熱能力に影響を及ぼす。かつて、ヨーロッパやアメリカ大陸において、セイヨウミツバチApis mellifera (以下、セイヨウ)で大流行した本ダニが、2010年にニホンミツバチApis cerana japonica (以下、ニホン)より初めて確認された。日本全国のダニ寄生率を調査した結果、セイヨウでは寄生が確認されなかったが、ニホンでは本州全域に寄生が拡大していることが明らかになった。室内レベルの寄生実験でも、セイヨウよりニホンにおいてダニの寄生率が高いことが示された。ダニをミツバチ胸部背面に付着させるとグルーミング行動(以下、GR)が誘発され、GRを行った個体の比率およびダニの除去率はニホンよりもセイヨウで高く、ミツバチのGRがダニの寄生率を低下させる有効な反応行動であることが示された。今回は、ネオニコ3剤(イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン)をミツバチに経口投与し、各剤がGRおよびダニの除去率に及ぼす影響について比較した結果を報告する。