| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-F-206 (Poster presentation)
「ブナの実活用プロジェクト」は、信州大学の研究者を中心メンバーとした産学官民協働の取り組みである。長野県飯山市の里山資源であるブナ堅果(ブナの実)の利活用を通じて、自然の恵みの価値の認識向上を図り、中山間地域の活性化の仕組みの創造を目指す。その手段の一つとして『ブナの実羊羹』を開発・発売した。本報告では、プロジェクト発足から第1次販売が終了するまでの経緯を述べる。
この取り組みは、子ども達が誇れるものを地域で作り、形ある活動として残したい、という有志の市民グループが、山形県小国町でかつて作られた『ぶな羊羹』の再現を目指した小さな活動から始まった。そして信州大学「地(知)の拠点整備事業(COC事業)」の支援をきっかけに、同大学の生態学、調理科学、被服学、デザイン学の教員と飯山市内の観光・飲食・福祉事業者など、多数のステークホルダーの協力を得ることで、産学官民のプロジェクトとして徐々に発展した。
商品化への動機づけとなった基礎研究としては、市内でのブナの実の結実特性、実の栄養的特徴、種皮の染剤利用可能性の検討、実用新案登録された『ブナの実羊羹』のパッケージデザインの開発などが挙げられる。
並行して飯山市内では生産・流通体制が構築され、また、長野県観光部および信州大学内各部署間の連携も図られることで2016年3月、『ブナの実羊羹』(税抜き500円)は主に飯山市内および都内アンテナショップ、インターネット上で発売された。限定生産された2500本は同年8月末までに完売となった。
その経済的効果は今後検証予定だが、以上の経緯から、中山間地域の活性化の手段として地域資源の商品化がある程度有効であることや、活動の動機づけに基礎研究の知見が重要な役割を果たし、こうした要素が商品としての高付加価値化に結びつく可能性のあることが示唆された。現在は次期生産分(2〜3年先)の予約注文をネット上で受け付けている。