| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-207  (Poster presentation)

外来種で緑化された造成斜面における半自然草原の創出 ~試行8年目の植生と植物相~

*澤田佳宏(淡路景観園芸学校, 兵庫県立大学緑環境景観マネジメント研究科), 藤原道郎(淡路景観園芸学校, 兵庫県立大学緑環境景観マネジメント研究科)

近年,半自然草原の多くで植生管理が行われなくなり,遷移が進行することによって草原が衰退している.一方,公園緑地や圃場整備後の畦畔などの造成斜面の中には,今後も草刈りが持続しそうな立地がある.しかし,これらの立地ではもともと在来の草原生植物が乏しく,外来牧草やワイルドフラワーで緑化されるなど、外来種が優占していることが多い.管理が持続しそうな造成斜面に半自然草原を創出できれば,草原生植物の保全の場として活用できる可能性がある.そこで、本研究では,2009年5月より,外来種で緑化された造成斜面で半自然草原の創出を試みている.
試験地とした斜面は1990年代に造成され外来牧草類で緑化されている.試験開始前は、春にはネズミムギが優占し,夏から秋はセイタカアワダチソウが優占していた.施設管理者によって6月および10月に草刈りが行われている.
2009年5月,この斜面に「A区(外来種駆除+在来種導入区)」「B区(外来種駆除区)」「C区(対照区)」の3つの試験区を設けて実験を開始した.A区では外来種の抑制(5月・10月)に加えて,近隣の畦畔で採取した草原生植物の種子を播いた(6月・11月).B区では外来種の抑制のみをおこなった.C区では特に何もしなかった.いずれの区でも,施設管理者による草刈りは従来どおり実施した.草原再生のための年間の作業時間は調査時間も含めて12時間のみとし,2016年度も継続中である.
ネズミムギは結実前の刈り取りによってほぼ抑制できている.A区で抜根除草によりセイタカアワダチソウの密度を下げた場所で、別の外来種であるタチスズメノヒエが目立ち,問題となっている.A区に播種した草原生植物の中では,チガヤ,ウツボグサ,ノアザミ,ヤマハッカ,メガルカヤ,アブラススキなどは容易に定着したが,ツリガネニンジンをはじめとして定着が困難なものもあり,播種による導入の可否には種間差が大きいことが伺えた.


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