| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-F-216 (Poster presentation)
1.研究の背景と目的:
森―川―湖までの河川の土砂移動動態とアユ・ビワマスなどの産卵環境に関連性があることは、既存研究から指摘されている。しかしながら、「土砂移動動態」の程度を指標化して関係者に見える化する方法は、未だ定まった手法が確立されていない。本研究では、河川工学の知見を応用して、土砂移動動態の視点からのアユ・ビワマスの好適産卵環境区間を推定し、地域関係者に保全回復に重要な河川区間を見える化する手法の開発を目的として研究を行った。
2.研究の方法:
Step1:アユやビワマスなどの産卵環境に関する現地調査や既存研究から好適産卵環境区間
の指標となる河床材の粒径や堆積場所などの環境条件について設定を行った。
Step2:河道セグメントや河床材粒径など土砂移動動態に関連した既存の河川工学の理論式
の知見を収集整理し使用する理論式を選定した。
Step3:アユ・ビワマスの好適産卵環境となる条件の数値を設定して理論式を展開した。
Step4:理論式展開結果に基づきGISにより琵琶湖周辺の11河川についてアユとビワマスの
好適産卵環境が形成されるポテンシャルのある区間を推定して色分けをした。
3.結 果:
本研究では利用できる理論式として「岩垣の限界掃流力の理論式」を選定した。理論式を展開した結果、河川勾配が土砂移動動態の良い指標となるという結果が得られた。
4.考 察:
アユの好適産卵環境区間は流入河川の下流域にあると仮説を立てていた。ところが、中上流域でも河川勾配条件の視点からは産卵環境に良いと推定される区間があった。そのため、特に中上流域のアユの分布範囲については、現在だけでなく過去の分布状況も踏まえて、産卵環境回復ポテンシャルを検討する必要があると考えられた。