| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-220  (Poster presentation)

機能形質に基づく 外来・在来植物の分布メカニズムの解明

*冲邑時代, 森章(横浜国大・環境情報)

近年外来種の侵入が世界中で急増しており、侵入や分布拡大メカニズムの解明は喫緊の課題である。本研究では、機能形質を用いて侵入能力を評価し、特定の特定の侵入源からの外来種の分布メカニズムと在来種の分布との関係を解明することを目的として研究を行った。
調査は北海道の知床国立公園内の道路約31kmに沿って362個の調査区を設定し、その中の植生調査および環境データの測定を行った。また、各出現種について葉面積や種子重量などの機能形質のデータを収集し、外来種と在来種での機能形質の違いや、機能的多様性の環境・空間要因との関係、空間分布パターンなどについて解析を行った。その結果、調査地全体では在来種で種数が多かったのに対し、1調査区あたりの平均では、種数は外来種、機能的多様性は在来種の方が高かった。また外来種の機能的多様性は町から離れるほどに低下していた。群集間の類似度に着目すると、多くの場合で外来種の方が分布範囲が広かったが、重力散布の群集でのみ逆の傾向を示した。また、機能形質はSLA、種子重量、冠毛の有無などで有意な差が見られ、外来種で遠くへの種子散布や競争能力に有利な傾向が見られた。以上のことから、在来種は環境条件などにより住み分けており、外来種は侵入に関わる形質で有利な傾向にあることが分かった。また、重力散布種は町からの拡大の途上であって今後のさらなる侵入が危惧されることから、本研究のように機能形質を用いることで外来種侵入への対策を効果的に進められると考えられる。


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