| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-222  (Poster presentation)

外来植物の侵入域の広さに対する導入圧と生態特性の影響:牧草における検討

*江川知花(農研機構・農環研センター), 大澤剛士(農研機構・農環研センター), 西田智子(農研機構本部), 古川泰人(酪農学園大学)

外来植物の分布域の広さ(以下、分布規模)は、種によって大きく異なる。分布規模に影響を及ぼす要因を特定することは、各種の生態リスク評価を行う上で重要である。外来植物の分布規模は、個々の種の生態特性に加え、人為的な要因、すなわち導入圧にも強く影響されうる。本研究では、農業利用による農地への播種量を導入圧と捉え、外来植物の分布規模に対し、導入圧と生態特性がそれぞれどの程度影響を与えているかを広域スケールで評価した。

明治期に北海道に意図的・非意図的に導入された外来植物のうち、道内における現在の分布規模を5 × 5 kmメッシュ数で定量できた60種を対象とした。北海道における外来植物の主な農業利用形態は牧草であることから、各種の牧草としての利用履歴を調査し、戦後~現在に積極的な利用が認められた14種については、導入圧=播種用種子流通量とし、残りの46種については導入圧=0とした。導入圧に加え、各種の種子重、最大植物高、開花期間、栄養繁殖の有無などの生態特性に関する情報を収集し、分布規模との関係を解析した。また、各要因の相対的な重要性をAkaike Weightの和をもとに定量化した。なお、過去に牧草地であった場所を含むメッシュも多いため、ここで示された分布規模に影響を及ぼす要因は、侵入性に直接結びつくものではない。

解析の結果、分布規模は、導入圧、種子重、栄養繁殖の有無と強く関係していた。分布規模の影響要因としての導入圧の重要性は、全要因中で最も高かった。上記の結果は、国立公園特別保護地区など生物多様性を保全する上で特に重要な地域を含むメッシュのみを抽出して解析した場合でも同様であった。

以上より、外来植物の分布規模は、農業利用の程度に大きな影響を受けていることが示された。外来植物の生態リスク評価にあたっては、当該種の生態特性に加え、人為的な利用状況についても十分に考慮する必要があるだろう。


日本生態学会