| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-F-223 (Poster presentation)
ヒメホテイアオイは,北米から中央南米大陸にかけて自生するミズアオイ科の水草で,日当たりの良い湿地や浅水域にほふく枝を伸ばして生育する一年生植物である。本種は,攪乱依存型の初期侵入種と考えられ,草高のある草種に覆われる前の遷移初期の水辺で急速に生長しマット状の密度の高い群落を形成する。観賞用水草として広く流通され,自生地以外にオーストラリアやヨーロッパに帰化し,水田や池,水路など攪乱頻度の高い水辺域で雑草化する危険性が高い。
我が国への帰化は, 1996年に静岡市内の放水路内で野生化していることが初めて確認されて以降,他地域での帰化事例は熊本県など少数にとどまってきたが,2012年に環境保全型農業の実施団体と埼玉県桶川市で実施した「田んぼの生きもの調査」にて無農薬水田にヒメホテイアオイが生育していることを確認した。引き続き2013年および2014年に桶川市と荒川を挟んで隣接する川島町でも調査を行ったところ,ヒメホテイアオイが当該地域に広く定着していることを確認した。
2015年度までの調査で,慣行水田27筆,休耕田4筆を含む35箇所でヒメホテイアオイの生育を確認し,3年間の調査で荒川を挟み約2kmの範囲の慣行水田,休耕田,用排兼用水路,排水路など多様なハビタットを含む計73地点でヒメホテイアオイの発生が認められた。ヒメホテイアオイは除草圧の低い無農薬水田や休耕田だけでなく,除草剤にて通常の雑草管理を行っていると考えられる慣行水田にも侵入していたことから,他地域でもアクアリウムなどから本種が逸出すると,多くの水路や水田に定着するおそれがある。