| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-224  (Poster presentation)

外来種の新たな侵入経路!? 金魚水槽に潜む淡水ゴカイ

*阿部博和, 田中正敦, 上野裕介(東邦大学理学部)

 アクアリウムトレードでは、主に鑑賞目的として、多くの水生生物種の自然分布域外への輸出入を行っている。流通の対象となる種は、その移動に対してある程度の注意が払われており、流通に関する法整備も進みつつある。その一方で、流通対象種に付随して非意図的に移動する小型無脊椎動物などに関しては、検出される機会が少ないことも相まって、現状ではその移動に対してほとんど注意が払われていない。流通対象外の種のいくつかは、実際に非意図的な混入により個人所有の家庭内水槽から発見された例も報告されているが、このような生物の生態リスクはほとんど評価されていない。
 本発表では、国内(千葉県)の家庭内の金魚水槽の底砂から淡水性のゴカイ科多毛類Namalycastis hawaiiensis (Johnson, 1903) が初めて発見されたことを、その詳細な形態情報とともに報告する。本種は、その発見状況から、明らかにアクアリウムトレードの流通プロセスを介して非意図的に金魚水槽に混入されたと考えられる。本種が水槽に至るまでの移動経路の詳細は不明な点が多いが、他に妥当なベクターが無いことから、水槽に導入するためにアクアリウムショップ(茨城県)で購入した水草(マツモ)本体か、その根に付着した堆積物に紛れ込んでいた可能性が高い。
 本種は、太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布するが、国内では自然分布域と考えられる琉球列島からの採集記録があるのみである。したがって、今後は家庭内水槽やアクアリウムショップにおける本種の侵入状況の把握や野外への定着可能性などの評価を行い、今回のような水槽由来の個体が野外に流出し外来種化することを未然に防いでいく必要があるだろう。また本研究において、本種は世界的にも人気の高い観賞魚である「金魚」を飼育するための水槽の砂利中から発見された。本種の密かな侵入は、すでに世界的に広まっているかもしれない。


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