| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-G-227 (Poster presentation)
千曲川中流域は,早瀬,平瀬,トロや淵,ワンド等の多様なハビタットから成り,かつてはウグイやオイカワをはじめとする雑食性コイ科魚類が優占種であった.ところが近年では外来肉食魚コクチバスが生息域を拡大しており,在来魚類の生息状況にも大きな影響を及ぼしていると推測される.本研究では,千曲川中流におけるコクチバスの分布特性を明らかにすることを目的に調査をおこなった.2016年9~10月に長野市赤坂橋から坂城町鼠橋の約20km区間に計8箇所の調査地点(各地点に早瀬,平瀬,トロ・淵を含む)を設け,投網を用いた捕獲により地点ごとにコクチバスの優占状況を調べた.また,これら8調査地点のほぼ中央に位置する冠着橋地点において2015~2016年にかけて月1回の頻度でハビタットごとに魚種・体サイズ組成を調べた.2016年秋季の8地点における調査では、全8地点でコクチバスが捕獲されたが,下流側より上流側の調査地点で,さらに早瀬や平瀬よりも流れの緩いトロ・淵でコクチバスの優占度が高い傾向が認められた.コクチバスは全地点で採集された全魚種661個体の19%を占め,個体数としてはニゴイ44%,オイカワ23%に次いで多かった.また,冠着橋地点での周年調査により,コクチバスの優占度がハビタットや季節によって変異することがわかった.コクチバスはトロ・淵で年間を通じて最優占種であったが,早瀬や平瀬では夏季には優占するものの秋以降には急激にその割合が低下した.一方,2015年に捕獲されたコクチバスはすべて殺処分として調査を継続したが,翌年の初夏には再び2015年と同程度(個体数比で約4割)の優占を示した.以上のことから,千曲川中流域においてコクチバスは緩流ハビタットを中心に定着し,夏季には生活圏を平瀬や早瀬に,また上下流方向にも生息圏を拡げつつ個体群を維持拡大していると考えられた.