| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-231  (Poster presentation)

徳之島における外来イエネコの希少種捕食と安定同位体比分析

*中下留美子(森林総合研究所), 塩野崎和美(奄美野生動物研究所), 亘悠哉(森林総合研究所), 中嶋亜利香(筑波大学・生命環境), 小野綾美(筑波大学・生命環境), 藤岡正博(筑波大学・生命環境), 山田文雄(森林総合研究所)

 外来肉食哺乳類のわずか30種が脊椎動物の多くの絶滅や生息数減少を起こし,16世紀以降に鳥類で87種,哺乳類で45種,爬虫類で10種の絶滅が起きている.特に,島嶼での絶滅は,外来イエネコFelis silvestris catusの影響が大きい.本来,肉食哺乳類が生息しない,世界自然遺産候補地の鹿児島県の徳之島(面積248km2,人口3万人)において,イエネコ対策の参考にするために,希少在来種の生息地である森林域で捕獲されたイエネコを対象に,炭素・窒素安定同位体比分析による食性調査を行った.捕獲直後のイエネコの体毛87個体,在来種3種(ケナガネズミ,トゲネズミ,アマミノクロウサギ)の体毛,捕獲後シェルターにて飼養中のイエネコの体毛7個体,その他地域で飼養中のイエネコの体毛7個体,およびペットフードを試料として比較検討した.また,捕獲個体については,捕獲時の体重や性別,糞に希少野生動物が含まれていたか否かの情報も使用した.その結果,捕獲個体・シェルター個体・ペット個体の三者間で,δ13C ・δ15N 値のいずれについても有意差はなく,餌資源であるペットフードと希少在来種の比較では,δ13C ・δ15N 値ともに希少在来種の方が有意に低かった(p<0.05).また,糞中に希少在来種が見られた個体6個体は,見られなかった個体81個体に比べ,有意にδ13C 値が低かった.これらのことから,糞中に希少在来種が見られた個体は,そうでない個体に比べてより恒常的に野生生物を餌としていた可能性がある.また,シェルター個体とペット個体のような完全室内飼育の個体に比べ,捕獲個体のδ13C 値は低い傾向が見られた.これらのことから,徳之島における希少在来種の保護のためには,ノラネコや放し飼いネコの室内飼育の義務化や飼育放棄禁止など,適正飼育の徹底が早急に求められる.


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